『先天性心疾患』医師国試で効率よく満点を目指す ②ファロー四徴症、心室中隔欠損症

前回の記事でチアノーゼ疾患とファロー四徴症についてまとめました。
https://peddoctorf.com/先天性心疾患の勉強方法①チアノーゼ、ファロー四徴症/

私は普段大学病院の分院で新生児から一般小児科まで幅広く日常診療にあたっています。
先天性心疾患に現在出会うとすれば、出生後の心雑音や自院外来、近隣のクリニック等からの心雑音の紹介、または救急車でショックの子が運ばれてきたときに先天性心疾患が見つかったこともあります。
私自身来年小児科専門医の試験が控えておりますので、自分の勉強も兼ねて先天性心疾患の復習をやっていこうと思います。

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  1. 前回の復習
  2. ファロー四徴症(TOF)身体所見、治療
  3. 心室中隔欠損症(VSD)

1、前回の復習
①まずはチアノーゼ疾患を暗記しましょう!!→略語で覚えると簡単

チアノーゼ疾患は全部で9疾患覚えておきましょう。略語でTで始まる疾患が多かったです。②TOFはチアノーゼ出現の時期が大事→国試でも問われる
③TOFはストーリーで覚えてしましましょう!!→きっといつか役に立ちます。
まず、肺動脈狭窄があり、右室肥大、心室中隔欠損、大動脈騎乗この順に血液循環をイメージして覚えましょう。

2、TOF身体所見と治療
血行動態を理解した上で、身体所見、治療をまとめましょう。
身体所見
・無酸素発作(スペル)
以前実際に患者さんに当たったときに上級医や心臓血管外科の先生がスペル、スペル言っていて何のことかわからなかった記憶があります。
啼泣を契機に肺動脈狭窄が強まり、右左シャントが増え、チアノーゼが増悪します。
チアノーゼが数十分持続した当直時はヒヤヒヤで眠れなく、ネオシネジンを反復投与したのを覚えています。
・蹲踞
身体を曲げることで大血管を折り曲げて体血管抵抗をあげることで右左シャント量を減らします。
スペルが起こったときも蹲踞をすることで自然とシャント量を減らすように自分で調整しているのです。

治療
・薬物治療
モルヒネ(鎮静目的)
フェニレフリン(体血管抵抗⬆︎)
βブロッカー(肺動脈狭窄解消)
・姑息手術(乳児期)
鎖骨下動脈ー肺動脈吻合(BTシャント)
姑息的に肺動脈の発育を促す。
・根治術(1-2歳)
VSDパッチ+右室流出路狭窄解消

全ての治療がチアノーゼ解消をするために行われていることがお分かりだと思います。

ここで国試の問題の確認
107I54
2か月の男児。生後まもなく心雑音を指摘され、心エコー検査で右室流出路狭窄、心室中隔欠損および大動脈騎乗を指摘されている。
この患児の治療方針として正しいのはどれか。

a 肺動脈絞扼術
b 根治術は成人期に行う
c プロスタグランディンを投与
d 直ちに心室中隔欠損症閉鎖術を行う
e 肺動脈の発育後に心内整復術を行う

最近の先天性心疾患の問題は
① その病気がチアノーゼ疾患なのか=肺動脈絞扼術なのかシャント術なのか
② いつ治療をやるのか
が非常に大事だとよくわかる問題です。
実際に小児の心臓の手術に立ち会うとよくわかりますが、あんなに小さい体で、7時間opeとかできるのであればやりたくないです。それは麻酔科の先生も同じ気持ちです。
しかしやらないといきていけない疾患=チアノーゼ疾患はそのギリギリのせめぎ合いでやるしかないのです。

TOFは早期診断して、まずは薬物療法で新生児期を乗り切り、乳児期にできれば予定手術でシャント術を行って、肺血流量を増やし、肺動脈の成長を待って1-2歳で心内整復術をやるという流れになります。

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3、心室中隔欠損症(VSD)
皆さんは赤ちゃんの心不全徴候について理解していますか。
成人の心不全徴候とは少し異なります。なぜなら赤ちゃんはみんなむくんでいるし、言葉を話せないからです。これだけでも国試の一般問題や学校の試験に出てきます。
乳児の心不全徴候として
・多呼吸
・不機嫌
・体重増加不良
・哺乳不良
を覚えておきましょう。
VSDは『いつ心不全徴候が出てくるのか』が臨床的には大事です。
それではまずは結構動態を確認しましょう。

VSDー血行動態はいたってシンプルです。
ポイント1 心不全は左心不全メインか右心不全メインか。
ポイント2 心不全出現時期はいつか。

この2つがさらっと答えられれば、VSDのマスターも近いです。

ポイント1について。
右心不全と思った人が医学生の中には多いのではないでしょうか。無理はありません、私も恥ずかしながら小児科医になりたての頃はそう思っていました。
しかし、VSDは左心室→右心室→(右室の圧勾配にそって)→肺動脈量増加→左心房への流入血流量増加→左房・左室拡大
とまずは左心不全徴候が出てきます。
肺血流量がだんだん増えて肺高血圧となり、左右シャントが右左シャントの変わることをEIsenmenger症候群と言いますね。
Qp/Qs>1.5が治療の目安となります。

ポイント2について
それではいつ心不全徴候が出来てくるか。
出生当時児の心臓は右室圧が成人より高いです。(胎児循環の名残)
そのため左右シャント量は出生後から数ヶ月の経過で増えてくることになります。
そのため小欠損孔だと心雑音も小さく出生直後は聴き逃され、例えば2ヶ月、3ヶ月の予防接種時の聴診で気づかれることや哺乳不良、体重増加不良で気づかれることもあります。
心不全出現時期は出生後数ヶ月と覚えておいてください。

VSDの治療
1、経過観察
欠損孔の大きさ次第では自然閉鎖が見込めます。
2、内科的治療
利尿薬、ACE阻害薬等で右室圧上昇に到るまでの時間を遅らせます。
3、手術
欠損孔のパッチ閉鎖術を1歳以下を目安に行います。

※ひっかけとしてよく使われれうのが肺高血圧に対する治療。
VSDが起こす高血圧には適応はありません。利尿剤等を使いながら、児の体格的な成長を促してさっさと閉じましょうというような治療です。

それでは医師国試の確認です。
111I30
心室中隔欠損症によるうっ血性心不全と肺高血圧を伴う4ヶ月の乳児について、適切な治療法はどれか。

a 利尿薬の投与
b β遮断薬の投与
c 高濃度酸素の投与
d 肺血管拡張薬の投与
e 1歳未満の開胸制服手術

正答率30%
みなさん何に飛びついたのかというと、肺血管拡張薬でした。あとは1歳未満で開胸で手術をやるのかなーなんてとこで迷ってdを選択したのかなーと考えます。
やはり治療時期、大事ですね。

おまけですが、VSDの雑音の最強点はどこでどのような音が聞こえますか。

答え 胸骨左縁第4肋間に全収縮期雑音が聞こえます。
   経過が長く肺高血圧になるとⅡpが亢進したり、Ⅲ音が聞こえたりしますね。

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本日のまとめ
① TOFの治療は全てはチアノーゼを改善するために行う。
② TOFの治療は、1-2歳で根治術に持って行きたい。
③ 乳児の心不全徴候を覚える。
④ VSDは右室圧が低下してきてシャント量が増加した3生後数ヶ月で徐々に心不全徴候が現れる。
⑤ Eisenmenger化を防ぐためにまずは内科的治療その後、1歳未満で根治術を開胸で行う。

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