医師国家試験のための新生児分野対策 ②

私は大学病院で小児科勤務医をしながら、医学部4、5年生を相手に教育担当をしております。また副業として医師国家試験対策予備校で講師としてオンライン授業を行っております。
この厳しい世の中で医師国家試験合格を目指す全ての医学部生を応援しております。
小児科分野を少しでも得意分野にして欲しいという思いがあり、記事を書いております。

前回の記事で新生児にとってもっとも大事な呼吸・循環について確認しました。

新生児①
ここでNCPRの知識の復習を確認しましょう(国家試験対策でここまでしっかりと勉強できる医学生は本当にすごいと思いますが、国試にちょくちょく出るのも事実です、、、)

日常臨床では下記のような場面で必要になる知識です。
ある日の小児科当直、夜中の3時に産科の先生から緊急コールがありました。
先生、たった今出生した児が、第一啼泣がなく、呼吸が確立できません。すぐに来てください、、、

NCPR

NCPRは下記の本に記載があるように日本全国の新生児科医、小児科医、産科医、救急医、麻酔科医、助産師が同レベルの処置ができるようにアルゴリズムが決められております。

日本版救急蘇生ガイドライン2015に基づく 新生児蘇生法テキスト

出生直後のチェックポイントとして、
●早産児、弱い呼吸・啼泣、筋緊張低下
いずれかを認めれば、
●保温、体位保持、気道開通、、、ポイント①
が必要となります。
自発呼吸の確立、心拍数100以上を目指して、
まずはバックバルブマスクによる呼吸のサポートを行い、、、ポイント②
それでも心拍数が60未満の場合のみ胸骨圧迫を3回の胸骨圧迫+1回のマスク換気で行います。、、、ポイント③
心拍数60ー100回の場合はマスクバック換気のみで胸骨圧迫は不要です。

過去問を見ていきましょう!!

102G39

新生児蘇生法で正しいのはどれか。a 気道吸引を十分に行う。b 気道確保のために側臥位にする。c 最初に静脈路を確保する。d 児の両足首を持って逆さにして揺さぶる。e Apgarスコアの1分値を測定してから蘇生を始める。

新生児の蘇生でもっとも大事なことは気道確保、呼吸の確立です。
呼吸さえしっかり確立可能であれば、循環は続いて確立することが多いです。ポイント①
答えはa (正答率88%)

114E27

日齢0の新生児。在胎39週5日、経腟分娩で出生した。啼泣が弱く、保温および口腔内の羊水の吸引と皮膚への刺激を行った。出生後30秒の時点で自発呼吸を認めず、心拍数110/分であった。まず行うべき対応はどれか。
a 気管挿管b 胸骨圧迫c 生理食塩液の静脈内投与d アドレナリンの静脈内投与e バッグバルブマスクによる人工呼吸

こんな問題、普段から新生児に関わることがない医師はわからない方も多いと思いますが、、、
出生後、保温、皮膚刺激、羊水吸引行った後、(ポイント①)自発呼吸がない新生児に対して次に行える行為として、バックバルブマスクによる呼吸の補助があります。(ポイント②)

そもそも出生直後の新生児にラインキープはすぐにできない可能性あり、生食やアドレナリン常駐は難しい。気管挿管はバックバルブマスク換気で呼吸の補助をやっても呼吸が確立しない場合にやります。
答えはe(正答率95%)

112D38

出生直後の新生児。妊娠36週までの妊婦健康診査では児の発育は順調であったが、妊娠37週2日に母親に下腹部痛と性器出血が出現し、胎児心拍数陣痛図で遅発一過性徐脈を繰り返し認めたため緊急帝王切開で出生した。心拍数60/分。出生時から自発呼吸がなく、全身にチアノーゼを認める。刺激をしても反応がなく、全身がだらりとしている。娩出後30秒の時点で自発呼吸を認めない。外表奇形を認めない。この時点で開始する処置として適切なのはどれか。

a 胸骨圧迫b 静脈路確保c 足底および背部刺激d バッグバルブマスク換気e 持続的気道陽圧法〈CPAP〉

Apgar 1点、早期に呼吸循環の確立が必要な児です。
まずは気道吸引を適切に行い、気道を確保して、(ポイント①)バックバルブバスク換気(ポイント②)を施行します。
それでも心拍数が100以上にならない場合は胸骨圧迫を行うことがあります。(ポイント③

答えはd(正答率55%)

過去問を見る限り、医師国家試験ではNCPR分野はポイント①ー③さえまずは押さえておけば解ける問題が多いことがわかります。目の前にピンチの赤ちゃんがいる時に救命を行うための最低限の知識を持って医師になりましょうというメッセージなのかもしれません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました