原因不明の腹痛 上腸間膜動脈症候群についてーCBTや医師国試にも頻出です。

小児科をやっていると思春期(小学校高学年ー高校生くらいまで)の腹痛の患者さんがよく受診されます。

頻度が高いものとして 便秘、感染性腸炎、過敏性腸症候群、虫垂炎、回盲部リンパ節炎

こんなところでしょうか。病歴や腹部CT所見からそこまで診断は難しくありません。

思春期の患者さんでも、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、炎症性腸疾患の方はいるので、難治性の腹痛時は内視鏡をお願いすることになります。(病院によっては消化器内科の先生がやってくれますが、年齢や基礎疾患次第では小児外科の先生がやってくれることもあります。)

もっとも診断が難しいのは画像所見や血液検査所見などに全く異常がなく、内視鏡検査でも異常が認められない腹痛です。

ここからが小児科医の腕の見せ所だと私は思います。

① 上腸間膜動脈症候群

Raman, S. P., Neyman, E. G., Horton, K. M., Eckhauser, F. E., & Fishman, E. K. (2012). Superior mesenteric artery syndrome: Spectrum of CT findings with multiplanar reconstructions and 3-D imaging. Abdominal Imaging37(6), 1079–1088.

最近上記の論文を読みました。

食後早期の満腹感、嘔吐、食欲不振、体重減少などをきたす患者さんで
左側臥位で改善する腹痛がある場合は念頭におきましょう。

診断は3D CTで可能です。
上腸間膜動脈と腹部大動脈の距離 <8 mm
上腸間膜動脈と腹部大動脈の角度<22°
を満たす時は診断可能です。

CT上、胃、十二指腸の拡張や左腎静脈の拡張もきたします。血尿をきたすナットクラッカー現象の原因となりますね。(忘れてた、、、、、)

医学部のCBTや医師国家試験でも頻出の疾患です。

クエスチョン・バンク CBT 2019 vol.2: プール問題 臨床前編

●CBT QB STEP2
Q 上腸間膜動脈の背側に存在する臓器は?
A 十二指腸を答えさせる問題があります。

●医師国家試験 106 I10
十二指腸を閉塞するのはどれか。
a 薬物性腸炎b 十二指腸憩室c 好酸球性胃腸炎d 上腸間膜動脈症候群e 十二指腸粘膜下異所性膵
正答率 85%

●医師国家試験 114 F25
健常人の腹部造影CTの連続スライス(A〜F)を別に示す。急激な体重減少などにより腹部大動脈との間隙に十二指腸が挟まれ、食後の嘔吐や腸閉塞の原因となり得る血管はどれか。
正答率  80%

国家試験やCBTでも問われており、医学生は8割ほどの正答率で答えられております。

実臨床では積極的に疑わない限りは診断が難しいかもしれませんが、造影CT等撮影した時には念頭に置くといいでしょう。

② 起立性調節障害

それでも何も見つからない場合は起立性低血圧を考えます。

1.立ちくらみやめまい
2.起立時の気分不良や失神
3.入浴時や嫌なことで気分不良
4.動悸や息切れ
5.朝なかなか起きられず午前中調子が悪い
6.顔色が青白い
7.食欲不振
8.腹痛
9.倦怠感
10.頭痛
11.乗り物酔い

上記のような症状と起立負荷心電図所見で診断をつけます。

小児科で出会う『原因不明の腹痛』の中に上腸間膜動脈症候群がどれほど混じっているのか、、

今後調べてみます。

腹痛の悩む子供達の助けになるかもしれません!!

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