このブログでは都内在住小児科医が小児科専門医試験合格までの道をご紹介しております。
2021年9月4日 パシフィコ横浜にて小児科専門医試験が無事施行されました。
一時は新型コロナの影響で試験自体の開催さえ危ぶまれした(私は勉強が間に合わず中止を少し期待しておりました笑)。
しかし、8月20日付で発表された小児科学会からの力強い開催宣言もあり、残り2週間は覚悟して勉強せねばという気持ちになりました!!
試験会場は非常に広く、蜜とは無縁、咳をしている方もおらず、感染リスクは非常に低そうという印象で、落ち着いて試験に挑めました。
小児科学会の英断に感謝申し上げます!!
試験本番までにやったこと
① 医師国家試験の小児科の分野を2周ほど
→国家試験の過去問といえど難しい問題は難しいです。ばかにせず完璧にする気持ちでやる姿勢が重要だと思いました。とにかく全分野を満遍なく網羅するためにサラーと1ヶ月くらい前からひたすらやりましょう!!
脳腫瘍は出題はあまりないため(脳外科の範囲との認識?)スルーしました。
循環器・内分泌代謝・神経等はこれだけで十分な知識がつきました。
② 小児科専門医試験問題集
→正直最初はなんと使いづらい問題集なのかと思いました。全然知らない疾患もたくさん掲載されておりますし、何しろ解説もそっけない、、やっているうちに嫌になってしまいます。しかし、QBで全分野を網羅した後、試験1−2週間前からだいぶスラスラ解けるようになりました。本番でもちょっとした知識が少しは役に立った印象です。
③ REVIEW BOOK
→完全になめていました。REVIEW BOOKこそ小児科専門医試験のバイブルとい言っても過言ではないと思いました。後ほど問題ベースでどういうところが役にたったかご紹介いたします。
④ 小児科専門医試験過去問2019年、2018年分
→過去問からはあまり出ないという意見も10個上くらいの先生からは聞いていました。しかしそんなことはありませんでした。
(どこかのこども病院の先生方が総力をあげて作成されている)過去問を私はギリギリで先輩からもらえたけど、もらえない病院の先生方はどうすればいいのでしょうか!何か対策がないでしょうかね。理想は専門医機構が過去問と解答を公開して頂くことだと思うのですがいかがでしょうか。
特に勉強しておくといいと思った分野
① 免疫不全
REVIEW BOOK にほぼ完璧に網羅されております。過去問をうまく使いながらなんとか本番までに頭に全疾患入れておきましょう。
日常診療でやや敬遠されがちな分野だと思いますが、深くというよりは基礎を抑える気持ちでしっかりと学んでおくと試験本番役に立つと思います。
② 心疾患
特に大動脈離断症・総肺静脈還流異常症・左心低形成症候群等のQBの後ろの方に乗っていそうな疾患。
③ 代謝疾患
ガラクトース血症・ホモシスチン尿症・メープルシロップ尿症 これはREVIE BOOKでしっかり抑えましょう。
④ 内分泌疾患
低身長・思春期早発症・メタボが大好きな印象です。
⑤ 小児外科分野
鎖肛の問題は外科色が強いからかあまり見たことはないですが、胆道閉鎖・胆道拡張・停留精巣等はよく出る気がします。
試験直後、必死にメモった内容をブログにてご紹介いたします。来年以降受ける先生方の参考になればと思います。(ごく一般的な小児科の知識しかないであろう私の心の声と共にお届けいたします。)
2021年 Aブロック
順不同ですが心に残った問題、試験直後にメモっていた問題をご紹介いたします。設問の肝となるような(2個選べで3個は絞れたけどもうひとつどれを選ぶか悩んだ選択肢)を設問を改変する形で掲載しておりますので、1受験生は本番ここで迷ったんだな程度に読んでいただければ幸いです。
●アナフィラキシー時のボスミン筋注の禁忌は??
おそらく糖尿病と先天性心疾患でいいかなと思っています。日常診療をやっていて、「先天性心疾患+アレルギー」や「糖尿病+アレルギー」の組み合わせに出会ったことはなかったですが、確かに小児科専門医には必要な知識だなーと思います。しかし今考えると糖尿病があろうが目の前でアナフィラキシー起こしていたら打つメリットはある気がしてきました。他に何か妥当な選択肢ありましたっけ?
こういう日常診療で出会うかもしれないが自信を持ってそうだと言い切れないむずがゆい問題がたくさん出ますので、日常診療の疑問を一つずつ正攻法で解決している癖がある方は解きやすい試験だと思いました。
●各種感染症の潜伏期間
答えはロタウイルス3日間でいいです。 風疹、水痘、麻疹等の潜伏期間を正確に覚えておく必要がありました。
『潜伏期間はどのくらいですか?』こちらも明日の外来で質問されるかもしれない内容です。ググれば一発で出てくるのでふわっとしか頭に入れていなかったですが、こういう基本事項は全小児科専門医は頭に入れておくようにというメッセージなのでしょう。
●乳糖不耐症でガラクトースは上昇するか。
ガラクトース血症と乳糖不耐症はしばしば鑑別に難渋することがあるようです。ガラクトース血症が乳糖不耐症を起こすとは言えないと思いました。その他の選択肢、シトリン血症、新生児肝炎、胆道系閉鎖等ではガラクトース上昇しますよね。
●即届出疾患に先天性風疹症症候群は入っているか
入っておりませんでした。麻疹・風疹は即届出ですが先天性風疹症候群は7日間の猶予がなぜかあります。血迷って風疹と先天性風疹症候群を選択しました、、、麻疹・風疹、日常診療で出会ったことがないので頭から抜け落ちていました、、
●3歳時は数を1から5まで理解できるか。線をまねできるか。片足立ちを2−3秒できるか。ハサミをつかえるか。
数を数えられるのは覚えていました、同様に片足立ちできることも知っていました、、しかし、「1から5まで」「2−3秒」と聞かれると迷ってしまいました。
発達の問題、小児科医をやっていれば解けるかというと全くそんなことはありませんでした!!
●母乳栄養の母親は牛乳を飲んだほうがいいの?
厚生労働省がCa摂取を目的に推奨しているようです。牛乳を摂取するように説明するのは◯でいいのでは?
●小児のメタボの基準
選択肢では血圧が130になっていたため×です。
空腹時血糖100以上と腹囲80以上が答えでした。
過去問に出ていましたが、正確に覚え切れていませんでした、、選択肢は収縮期血圧が130となっておりました。細かい知識が要求されますがこのくらいは覚えておけよということでしょう。
●トリプレットリピート病
過去問でもよく聞かれますし、なんなら国家試験にもよく出ますね。
REVIEW BOOK に掲載されている疾患Huntington病・筋強直性ジストロフィー・脆弱X症候群・Machado-Joseph症候群
覚えておきましょう。
●停留精巣では鼠径ヘルニア合併するの?1歳までにopeしたほうがいいの?
鼠径ヘルニアは合併あり→review bookに記載あり。手術は2歳までに行うが標準のようですので1歳までに行うは×だと思います。
●男子の思春期で最後に見られるのは声変わり?腋毛?ひげ?
声変わりが最後でいいのでは??
●血液検査、頭部MRIに異常のない5歳の初回無熱性けいれんは全例緊急入院の適応か。
その他選択肢との兼ね合いで緊急入院としましたが、血液検査・頭部MRI異常なければ経過観察目的の入院や脳波検査目的に入院は必須でしょうか??
その他選択肢が「抗てんかん薬開始したら2年間は継続の必要があります」だったり少し言い過ぎな選択肢な記憶があります。
●マイクロバブルテストの特異度は高い?
マイクロバブルテスト陰性であった時にRDSでない確率→スライドガラス上の泡がいっぱい見えている状態である時にRDSではない確率。高そうだなと思いましたがいかに??
●ステロイド軟膏、1回にどのくらい塗るの?
2週間後に来る5歳くらいの患児に1日2回両頬部にロコイド塗ることにします。ロコイドを何g出せばいいのか?という問題だったと思います。
普段から適当な本数軟膏出すのは良くないですよと伝えたかったのでしょうか、、
調べたところによると
1FTU(約0.5g)は、大人の手のひら2枚分の面積とのことです。
ここからは推論ですが、1FTUで1日2回の5歳の子供の両頬部の塗布は可能と考え、2週間で14FTU必要→7g的な感じで計算するのでしょうか??(答えは5g何本処方するかという聞かれかただった。)
●4か月児のWBC7000は正常値??
4か月児の血算の値が書いてあって、基準外なのはどれかという問題でした。Hb・血小板は正常値だった気がして、WBC7000を渋々選びましたが、これ以外に異常値ありましたか??7000少し低いけど異常というほどではない気がしますが、、
→リンパ球70%が異常なのではという声を頂きました。
●糞便感染と経口感染が見られるもの
胃腸炎症状が出現するエンテロウイルス属を選べという問題だったみたいです、、
●低Ca血症、母体糖尿病+DiGeorge症候群
母体糖尿病で低Caよく出ています。
DiGeorge症候群も専門医試験でよくでいている印象です。
REVIEW BOOK MINORでバッチリまとめられています!!
2021年 Bブロック
●マルチプルカルボキシラーゼ欠損症
今回のテストで唯一と言っていいほど全くわからない聞いたこともない疾患でした。ビタミン何を補充する必要があるかという問題だったと思います。→ミルクアレルギーのビオチン欠乏の問題だったようです。それを伺ってもピンときません、、勉強不足です、、
●MELAS
MELASは母系遺伝だ!!それはわかりましたが3世代の家系図が記載してあり、父方祖父の糖尿病・父方母の脳腫瘍・母方祖母の脳出血・弟の発達遅滞、みたいな中からMELASの遺伝と関係があるのはどれか選ばせる問題でした。女性の疾患は全てMELAS関連と考えて良いのでしょうか??わかりません。
●AMLの治療方針
マルク所見あり→おそらくAML(M2?)10日前から微熱・倦怠感
体温37.4度、出血傾向なし(紫斑なし)、活気不良
L/D Hb5.8 血小板3.7万 WBC7000(ブラスト30%・好中球1500ちょい)
こんな感じの設定でまず行う治療は?
1、赤血球輸血
2、血小板輸血
3、輸液
4、抗菌薬投与
5、ステロイド
1は決定として5は外せる。
出血傾向のない血小板3万に血小板輸血の必要はない。
あとは輸液か抗菌薬、これで38度以上が続いているか好中球が少なければ抗菌薬で決定だけどそんな状況ではなさそう。
そうすると輸液が正解なのか??腫瘍崩壊症候群リスクを減じるためにも輸液はメリットはあると考えました。(一応普段血液疾患を見させて抱きますが臨床的には輸液をやることは多いに考えられます。)
その他B問題は実際の症例に対する治療方針を聞いてくる問題が多かったです。
●クローン病の治療
●Basedow病の治療
●PSAGN治療
●難治性ネフローゼの治療
2021年小児科専門医試験を受験してみて
●結局は小児科専門医試験の過去問、国家試験の過去問で出題された問題をいかに素直にマスターできているか、これだけで6−7割は確保できる試験な気がしました。それからはいかに日常診療の様子を思い浮かべながら頭を使って正答を導けるか、もしくは勘に頼るか、そういう感じです。
外来でふと保護者の方等から投げかけられる質問に対してその場で真摯に受け止め、エビデンスのある解答ができる医師は強いと感じました。
●勉強はどの程度の時間が必要か??
1ヶ月集中してやれれば間に合う気がしますが、小児科というのは感染症が流行しているか・していないかに忙しさが左右されます。今年もRSウイルスが8月ごろ猛威をふるっておりました。忙しいとなかなか勉強に集中できなくなりますので2ヶ月はみておいた方が無難でしょう。
過去問を手に入れること、本当に大事です。これができるかできないかで難易度が超絶変わると思います。これだけでもこども病院や母数の多い大学病院で勤務するメリットはある気がします笑
小児科学会へ1小児科医としてお願いしたいこと
可能であれば小児科学会の方から過去問とその解答を公開して頂きたいと考えます。復元問題が出回っておりますが、復元の過程の手違いも相まり正当がやや不明瞭な物が多く、出題者の先生の意図を是非お尋ねしたいなという問題が多くあります。ストレスなく勉強することで日本の小児科医療の質の向上にもつながる気がしました(偉そうで本当に申し訳ありません汗)。
我々は日本の子供のために臨床を頑張りますので、最短で小児科医に必要な知識の方向性を是非示して頂きたいと考えます。
試験後に2021年の復元問題を作成頂いたtweetがありました。非常にありがたいですね。感謝感謝です!!!!!
皆様にいただいた返信より改めて復元問題を投稿いたしました。追加の選択肢や、間違いの修正、正当に関するご意見、ほかの復元問題などございましたらこちらにリプライをいただければと思います。問題の順番や選択肢の順番は再現出来ておりませんのでご了承ください。
— 小児科専門医試験復元2021 (@ped_fukugen) September 10, 2021
色々偉そうなことを書きましたが、ブログで小児科専門医試験を語れるほど私自身は偉くないので、
今後は初心に戻って、
『40歳までに資産1億円』
『この世からいじめと児童虐待をなくす』
『医師当直室環境の向上』
この3つをテーマにブログを記載して行こうと思います笑
今後ともよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました!!
小児科医の皆様で日本の医療環境の改善是非達成させましょう!!
コメント
専門医試験お疲れ様です!私も今年受けた者です。特にB問題の出来がいまいちで不安ですが…
4ヶ月児の血液検査異常値ですが、Hb 15が4ヶ月児にしては高いのかなと思いました。成育が出している小児検査基準値ガイドでも4ヶ月上限は13とのことでした。
まさかのHbが15が異常なのですか?!それはびっくりです!!作成された先生の意図を是非知りたい気がしますね。ありがとうございました。